ビジネスシミュレーションの紹介1(2014年度・秋学期)

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立教大学大学院ビジネスデザイン研究科には、ビジネスシュミレーションと呼ばれる名物授業があります。今日はこのビジネスシュミレーションの紹介を行いたいと思います。長くなりそうなので、数回に分けて記事を書く予定です。

■授業の目的
事業構想を担う創造的人材には、適切な決断を下す能力が求められます。こうした能力は教室での講義で培われるものではないため、院生が仮想企業のトップマネジメントチームとして企業の戦略的意思決定を経験的に修得するのがビジネスシミュレーションです。

■履修する前の不安
このビジネスシュミレーションは4~5名の院生がチームとなり、各人が役割(社長・財務・営業・製造・研究開発等)を担って、仮想企業の経営執行を実施します。毎年チーム間で競争が行われ、学生の間のみならず教授との間でも議論が繰り広げられます。

私は上の代の先輩に色々とヒアリングしたところ、「毎回週末を使って夜の12時過ぎまで話し合った」とか、「チームの中で意見が分かれて激論になった」などという話が出てきて、履修する前は正直不安でした。

ですが、こうした不安は、自分の心の持ちようでいくらでもプラスに転換していくことができることを追ってご紹介します。

■チームメンバーの役割を決める
チームメンバーは運営に携わってくださる先生によって決められます。よって仲の良い学友と組むという仕組みではありません。事前に自分の職種(経営者・営業・マーケティング・財務等)がどのようなものか、学校からアンケートが実施され、メンバーの職種が被りすぎないように配慮がされます。

チームは初回の説明会で発表されます。そして、各チームが夏休み中に自主的に集まり、各人の役割、会社名、会社のミッション・ビジョン・バリューなどを決めます。

私のチームは4名で、うち2名が若い中国人留学生でした。普段、投資ファンドで仕事をしている私は社長に立候補し、PRやマーケティングを専門にしているKさんが財務担当、留学生のLさんが製造、Yさんが営業担当になりました。

ここで重要なことは、社長は立候補で決めるのが一番だということです。履修をしてみて実感したのですが、各チームのカラーは社長によって大きく左右さます。各社がどういう戦略に打って出て、どういう意思決定を下すかは社長次第です。

ですから、社長をじゃんけんや、一番若い人にやってもらうなどという機械的な方法で決めるのは非常にもったいないです。チームの中心をしっかりと据え、最終的に社長が業績その他について責任を負うということをはっきりすることが必要です。

私は社長に立候補した後、以下のような目標を自分の中でたてました。
  • 自分はキャリアの中で比較的慎重な意思決定ばかりしてきたので、今回は成長のチャンスや他社に差をつけるような機会があれば、リスクを積極的に取っていこう。
  • 何でも自分一人でやってしまうことが多かったので、この授業ではメンバーを信頼し、任せるところは思い切り任せ、とは言え投げっぱなしにするのではなく、レビューはしっかりと行おう。
  • 実業の経験が浅い若い中国人留学生が2人チームにいるので、この授業を通して、どんな業界に行ってもある程度共通で役に立つ意思決定の方法を共に学んでいこう。
  • そのために、シミュレーションの前提条件・ルール・各社が置かれた状況・ファイナンスの仕組みなどは、一文一文チームで良く理解してから授業にのぞもう。

■授業が始まる前の事前準備の重要さ
私たちのチームは夏休み期間中、毎週一回集まって、事前に与えられたケースの読み込みを行い、同時に社名、ミッション・ビジョン・バリューの決定をし、財務シミュレーションモデルなどを組んで会社の中期事業計画を練っていきました。これが実はとても重要なことであったのを追って知ることになります。

本学では、岩田松雄先生の「トップマネジメント論」などの授業を通じて、企業のミッション・ビジョン・バリューを深く考えることがいかに大切であるかをよく学びます。そのため、私たちはかなりの時間をこれらの策定に使い、型にはまったような言葉ではなく、自分たちが納得できる具体的な言葉でミッション・ビジョン・バリューを決定しました。

これは今後、毎回の授業で求められる様々な意思決定をする際の礎となるものです。「なぜそういう戦略を取るのか?」、「なぜそういう意思決定を下すのか?」は、全てこの3つに基づいて行うからです。私たちチームは、議論が堂々巡りになった際はいつもこれらを振り返り、自分たちにとって適切な意思決定とは何かを決めていきました。

例えば私たちのチームのビジョン(近い将来なりたい姿)の一部は、「我々は、高品質な計測技術に革新的なデザインを加えて、お客様に一つでも多くの『スマートな生活』を提案します」というものでした。ですので、普段からR&Dの費用は多めにとっており、新製品が投入できそうだという状況があれば、積極的にラインの増設を行ったり、販売価格が不透明な状況でも打診的に新商品の生産を増やしたりしていきました。

当然、こうした意思決定は、「市場全体の需要がどうなるか」、「他社がどのような動きをしてくるか」、「何より自分たちのキャッシュポジションを横で見ると、多少の無理をして設備投資をしても大丈夫か」などという分析と絡めて行います。

何でもかんでもミッション・ビジョン・バリューでこう謳っているからと無謀な意思決定はできません。しかし考えがどんどん煮詰まって、もう二者択一しかないというところまで来たときは、それらに基づいて行動すると成功することが多かったです。仮に失敗しても不必要に狼狽することなく、次への策を冷静に練ることができました。

次回は、実際に授業が始まってからのことをご紹介します。

■レポーター紹介
  • S.N.(男・30代後半)
  • マネジメントバイアウトファンドやアセットマネジメント会社などで企業に対する投資・事業の再生などに携わる。
  • ファイナンス以外の分野の学生や留学生が多く、ビジネスに必要な幅広い分野の授業を受講できる点を魅力に感じ、2014年4月に立教大学ビジネスデザイン研究科に入学。現在、大学院2年生。


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