ビジネスシミュレーションの紹介2(2014年度・秋学期)

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前回書いたビジネスシミュレーションの紹介の第二回を書きます。

■白熱する授業
私たちの代のお題目は「財務体質も業績も悪い体重計メーカーの経営」でした。毎回の授業は次のような流れで行われます。
  1.  授業の後に配布される市場レポートと各社の経営実績を精読して、締め切りまでに自分たちのチームの経営計画シート(何台の体重計を製造するか、営業マンのルート配置をどうするか、従業員を増やすのか、設備投資をするのかなど)を完成させます。
  2. 授業ではプレゼン資料を作成し、なぜそのような経営計画シートにすることにしたのか、自分たちの意思決定のプロセスを説明します。また、それに留まらず、具体的なプロモーション活動の内容や新製品のスペックなどを練って発表します。
  3. 各チームのプレゼンを受けて、他のチームメンバーや教授との間で種々のディスカッションや質疑応答を行い、様々な論点について理解を深めます。

一番白熱するのは3番目のディスカッションと質疑応答です。指導してくださる教授からは、「他のチームに対する一方的な批判やダメ出しは禁止。建設的な議論を行って欲しい」とのルールが示されましたが、最初の頃はどうしても熱い戦いが繰り広げられがちです。

私たちのチームは、前回の記事で書いた通り、「意思決定のプロセスを学ぶ」ということを最重要課題にしていたため、「なぜこの商品ミックスで製造をするのか」であるとか、「なぜこのタイミングで設備投資を行うのか」ということを、できる限り数値分析を中心に行いました。

より具体的に言うと、「全部原価計算と直接原価計算で見たときの意思決定の違い」であるとか、「リソース制約がある中で、どのように商品ミックスを決めるのかというPIC分析」などを他のチームより時間を割いて行いました。

一方で、そうした分析を中心に行っていた関係で、他のチームが深く考えていたセールスプロモーションの内容や、マーケティング施策などはあまり触れることができませんでした。授業の中では、「マーケティングを疎かにしている」という厳しい指摘を受け、それに応える形で「その分、意思決定分析はしっかりやっている」などというやり取りが続くこともありました。

授業の運営について教授に相談したこともありました。仮想の企業であるとはいえ、社長を任されている状況下で、率直な意見を先生方に述べたこともありましたが、先生方全員から大変丁寧なご意見とフォローを頂き、本当に立教大学のMBAに進学して良かったと思いました。

こんな感じで最初の数回はチーム間のやり取りがかみ合わないこともあり、このまま爆発しないでやっていけるかと思うこともありましたが、そうした不安はいつのまにか消えていきました。

それは、各チームがものすごく頑張っており、それが各チームのカラーへと昇華され、結果としてそれが自分たちとは違うことを考えていることに対する敬意や興味にかわって来たからです。

私たちのチームは、通称・「浜辺の兄弟」がいる二つのチームと意見が割れることが多かったのですが、回を重ねるにつれて、「浜辺の弟がこの予算制約の中でこういうプロモーションを編み出すのは凄いな」であるとか、「確かに浜辺の兄貴が言っているマーケティング政策には理があるし、結果としてあっちの方が業績も出ているんだよな」と感心することが多くなっていったのです。

これが立教大学のMBAの最大の特長だと思います。立教大学のMBAには、老若男女国籍も様々なバックグラウンドな人が集まっており、互いに切磋琢磨しながら勉強しています。仮にこの授業が他の大学のファイナンス学科などで行われていたら、私たちのチームのようなアプローチをとる人たちも多かったでしょう。しかし立教のMBAでは、色々な個性を持つ人が実に様々な経営を考えており、結果としてそれが各チームの個性豊かな提案へと実を結んでいったのです。これは本当に勉強になりました。

■授業ではどんなコメントをするべきか
授業でのディスカッションを不毛なたたき合いの場にしないためには、どのようなコメントを心がけるべきでしょうか。この問いに対する正解というものはありません。ですが、参考までに私が気をつけていたことを共有したいと思います。

私は仕事が企業に対する投資や財務分析であるため、そのあたりで他のチームに前向きなコメントができないかをいつも心がけていました。

例えば、意思決定の手法を変えた方が本来そのチームが達成しようとしていることにより近づくのではないかと思った際には、全部原価計算で製品ミックスを決めるのではなくて、直接原価計算でどの製品をどれだけ製造するかを決めた方が良いのではないかという提案をしたりしました。

また、あるチームがポリシーとして掲げている経営方法に対して、モニターしている財務数値が適切でないのではないかと思った時もコメントを行いました。例えば、キャッシュの残高を気にして在庫を増やしたくないと思っているチームが、営業利益の大小ばかりを見ていた時などは、営業キャッシュフローや在庫回転率などをモニターした方が良いことを提案しました。

他には、もう少しリスクを取ってもいいのではないかというようなアドバイスをしたこともあります。例えば、一貫して最終損益が黒字で純資産の額がかなり積みあがっていたチームに対しては、ROEが他のチームに比べて低くなっている点などをコメントし、マーケットが拡大基調にあるのでレバレッジ(借入金)を活用して新規設備投資を行って、新製品の販売で利益を取りに行くことを検討しても良いのではないかなどです。

ビジネスシミュレーションの授業では、様々なバックグラウンド・職種の立教MBA生たちが、様々な提案やアドバイスをしてくれます。これは本当に有意義で楽しい時間でした。ファイナンス系の学生ばかりが集まるMBAでは、ここまでの厚みを授業で出すことはできません。多様な人材が集まる立教のMBAの奥深さを十分に堪能することができます。

次回、最終回として、感銘を受けた先生のお言葉などについて書こうと思います。

■レポーター紹介
  • S.N.(男・30代後半)
  • マネジメントバイアウトファンドやアセットマネジメント会社などで企業に対する投資・事業の再生などに携わる。
  • ファイナンス以外の分野の学生や留学生が多く、ビジネスに必要な幅広い分野の授業を受講できる点を魅力に感じ、2014年4月に立教大学ビジネスデザイン研究科に入学。現在、大学院2年生。


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